9月5日、院内で「CKD(慢性腎臓病)と降圧療法の意義」の勉強会がありました。
CDKは以前のブログでも何度か紹介していますが、慢性腎臓病のことです。健康な人に比べて腎臓の機能が約60%以下に低下している、あるいは蛋白尿などの腎障害を起こしている場合をいいます。糖尿病の患者さまは「糖尿病性腎症」という言葉でご存知かもしれませんが、腎障害は糖尿病の合併症の1つです。糖尿病性腎症を含む腎臓病を総称してCKDと呼んでいます。
CKDは不可逆的に進行します。つまり腎臓の機能は失われていくと治癒は難しく、腎臓の機能低下を遅らせることが治療の目標となります。腎臓の機能である体内の水分量の調節や老廃物のろ過がほとんどなくなった場合には透析療法や腎移植が必要となります。また、CKDの患者さまは心臓病や脳卒中という心血管疾患(CVD)の発生率が高くなることが分かっています。
CKDと高血圧と密接な関係にあり、高血圧になると腎臓の働きが低下し、逆に腎臓の働きが低下すると高血圧が悪化すると言われています。高血圧の患者さまは、腎臓の病気にも注意が必要です。さらに、高齢になるほどタンパク尿を合併する方が増えてきます。
降圧療法、つまり高い血圧を正常に下げることにより腎機能の低下を抑制できることが分かってきました。糖尿病の患者さまは、CKDの進展予防のためには、血糖管理も大切ですが、血圧管理がより重要と言われています。
CKDの進展予防のための血圧管理の目標は、糖尿病でない場合140/90mmHg未満、糖尿病がある、あるいは蛋白尿がある場合は130/80mmHg未満(75歳以上は150/90mmHg未満)です。またご家庭での目標の血圧は、上の血圧も、下の血圧もこれらより5低い値です。
食事、運動などの見直しと共に、多剤(薬)をしっかり使用し管理していくことが大切だとのことです。しかし、内服薬が必要な方の50-60%の方が飲み忘れをしていて、30%の方はは正しく薬を飲んでいないという報告もあります。
今回の勉強会で紹介されたのは、アテディオ®配合錠というお薬です。アテディオ®配合錠はバルサンタン80mgとシルニジピン10mgを含有する淡黄色の薬剤で朝食後に服用します。原則としてバルサンタン80mg及びシルニジピン10mgを併用している場合、あるいはいずれか一方を使用している血圧コントロールが不十分な場合に本剤への切り替えを検討します。副作用は頭痛、ほてり、肝機能障害、高尿酸血症、腎不全、高カリウム血症などがあるそうです。
アテディオ®配合錠は、2錠分が1錠にまとめられ、服薬の煩雑さが軽減し、飲み残しが少なくなり、しっかり降圧することが期待できます。またシルニジピンは、カルシウム拮抗薬に分類されますが、腎保護効果が高く、下肢のむくみなどの副作用が少ないとされています。
もう一つの話題は、慢性便秘症はCKD及び心血管病(CVD)、そして腎不全のリスクを増大させるという報告でした。糖尿病があり腎臓病が進行していくと自律神経障害や食事制限(特にカリウム制限)による便秘、また高齢で腸の動き悪くなるので便秘の方が多いなと感じてはいました。便秘の原因はさておき、腸内環境を整えるとCKDの進行が抑制されるという報告を見ると期待や希望も生まれます。
今回の便秘薬の紹介はグーフィス®錠。グーフィス®錠はエロビキシバット5mgを含有する淡黄色のお薬です。胆汁酸の再吸収を抑制することで大腸管腔内に胆汁酸の量を増大させます。胆汁酸は水分を分泌させ、さらに消化管運動を促進させるため、便秘治療効果が発現するそうです。副作用は腹痛、下痢などがあるそうです。
私事ですが、以前、透析療法を受けている患者さまの食事指導を担当していた時期がありました。透析導入時の思いを伺えば、「まさか自分が」「もう少し早く治療を開始していれば」という声。糖尿病と同じくCKDはほとんど症状がありませんので、少しでも早い治療のためには定期検査が必要です。ブログを見て頂いているご本人はもちろん、あなたの大切なご家族、ご友人、お仲間にも定期検査を受けて頂けたらと思っています。
管理栄養士 米田香織