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成長曲線

日本イーライリリー株式会社によって開催された栃木県内分泌懇話会に院長やトマト内科スタッフ計5人で参加しました。

 

新潟大学からはるばるいらっしゃった長崎先生のお話は学校健診での成長曲線の活用についてが主で、まとめると次のような内容でした。

 

平成26年4月に公布された「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令」によって、平成29年度から児童生徒等の健康診断に際して、子どもたちの発育を評価する目的で、座高測定を廃止し、身長・体重より成長曲線を積極的に活用するようになりました。

 

成長曲線を活用した発育の評価は、小・中学校に在籍している児童生徒全員を対象に行い、成長曲線をグラフ化していくことで、従来の横断的評価のみでなく、縦断的評価を加えることになり、これまで見逃されてきた児童生徒の成長に係わる課題や疾病を検出できることが期待されています。

 

学校で使用する成長曲線作成プログラムでは、成長曲線を描いたときに、次の9つの条件に該当した児童生徒が、問題があるとして自動的に検出される仕組みになっています。

 

1.         身長の最新値が97パーセンタイル以上(統計学的な高身長)

 

2.         過去の身長Zスコアの最小値に比べて最新値が1Zスコア以上大きい

 

3.         身長の最新値が3パーセンタイル以下(統計学的低身長)

 

4.         過去の身長のZスコアの最大値に比べて最新値が1Zスコア以上小さい

 

5.         身長の最新値が-2.5Zスコア以下(極端な低身長)

 

6.         肥満度の最新値が20%以上(肥満)

 

7.         過去の肥満度の最小値に比べて20%以上大きい(進行性肥満)

 

8.         肥満度の最新値が-20%以下(やせ)

 

9.         過去の肥満度の最大値に比べて最新値が20%以上小さい(進行性やせ)

 

  特に2、4、5、7、9が重要で専門医を速やかに受診し精査の必要があります

 

この自動検出プログラムにより新潟県では、以前には見逃されていた疾病が検出され専門医を早期に受診し、的確な加療で正常な成長曲線を描くようになった症例が多数あるそうで、数例をご紹介いただきました。

 

さて、トマト内科にも今年度の学校健診が終わり、7月ごろより体格異常を指摘され、学校から配布された「受診のおすすめ」とともに来院される児童生徒の方がたくさんいらっしゃいますが、残念なことに、成長曲線グラフを持参された方はまれで、本人も保護者の方も成長曲線を知らない方が大半です。ひょっとしたら、たまたまトマト内科を受診された児童生徒さんの在籍校が消極的だったということかもしれませんし、取り組んではいるけれどおうちの方には発信していないということかもしれません。

 

トマト内科では、成長曲線・成長速度曲線グラフを作成し、その他の検査と合わせて評価しているところですが、新潟県のように栃木県でも学校からの体格異常の受診のおすすめにはすべて成長曲線が添付されているといいのになあと率直に感じました。

 

最後に、トリビアとして、「牛乳を飲むと背が伸びるのか?」について。牛乳と成長についてさまざまな介入研究はありますが、報告もさまざまで、身長を伸ばす作用があるとはいいにくいようで、食糧難の時代には牛乳が良質な蛋白源でしたが、現在の豊食日本においては、牛乳にこだわる必要はないようです。

 

理事長 増渕