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DPP-4阻害薬

 

 2型糖尿病治療剤 胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤トラゼンタ錠(5mg)についての院内勉強会がありました。

 

DPP-4阻害剤は食事を摂った時のすい臓からのインスリンの分泌などを調整して血糖を下げる飲み薬です。他の薬と併用しなければ低血糖を起こす危険性が低いこと、体重を増やしにくいことも特徴です。

 

 

【血糖を下げる仕組み】

 

DPP-4阻害剤は、インクレチン(消化管ホルモン)を分解する酵素であるDPP-4の働きを抑えることでインクレチンを長持ちさせて働きを強め、インスリンを増やし、グルカゴンを減らして血糖を下げます。

 

血糖値が高い場合にはインスリン分泌を増強しますが、血糖値が正常あるいは低い場合にはインスリン作用を増強しないのが特徴です。

インクレチンが多く分泌されるのは食事を摂った後であるため、DPP-4阻害薬の効果も食事のあとに強く現れ、食後の高血糖を改善する効果があります。

 

2011年7月1日、DPP-4阻害薬のリナグリプチン(商品名トラゼンタ錠5mg)が製造承認を取得しました。適応は「2型糖尿病(ただし、食事療法・運動療法のみで十分効果が得られない場合に限る)」で、1日1回、1錠(5mg)を服用します。

 

食事の影響を受けないので、食前、食後いずれの服用も可能ですが、日によってまちまちにならないように、毎日同じ時間帯に水または、ぬるま湯で服用します。

 

~飲み忘れた場合~

飲み忘れに気がついた時、1回1錠を服用して下さい。飲み忘れに気がついた時間が、次の服用に近い場合には、 忘れた分を服用せずに1回お休みします。2回分を一度に服用しないようにしましょう。

 

トラゼンタ錠は、国内で4番目となる選択的DPP-4阻害薬です。既存の3製剤とは異なり、胆汁排泄型である点が最大の特徴です。排泄経路が腎臓ではなく、主に糞中に未変化体として排泄されることから、腎機能が低下している患者様にも用量調節の必要がありません。

 

2型糖尿病治療薬には、様々な種類がありますが、主治医は、色々なお薬の中から、患者様の病気の状態に合ったお薬を選んでいます。お薬のことで迷ったら、ご自分で判断せずに、ご相談下さいませ。

 

また、食事療法も大切な治療の一環です。

例えば ・・・

 

★肉より魚

DPP-4阻害薬によるHbA1c低下作用は、魚の摂取量や、EPA/DHAの摂取量および血中濃度と正相関するとの報告があります。つまり、青魚を多く食べるほどDPP-4阻害薬の効果がより強く発揮されるということのようです。欧米化された肉中心の食事ではなく、私たち日本人が昔から親しんできた魚中心の食事は、抗糖尿病的に働いてくれそうです。

 

★よく噛む

全く同じ量・組成の食事を5分で食べる場合と30分かけて食べる場合を比較した結果、30分かけて食べた時のほうがインクレチン(GLP-1)が多く分泌され、食後3時間以上経過しても分泌量に有意差がみられたと報告されています。この報告から得られるヒントは、同じ食べ物でもゆっくりよく噛んで食べることがDPP-4阻害薬の効果をより高める結果に結び付く可能性があるということです。食事の最初に野菜を食べることも、食事をゆっくりとるためのアイデアの一つです。

 

小さな目標でも達成することで、気持ちが前向きになれます。

 

一人で悩まず、前向きな治療が継続できるよう、

不安をなくし納得して治療にのぞめるよう、

一緒に考えさせていただきたいと思っております。

気になることや知りたいこと、心配なことは、ぜひご相談下さい。

 

管理栄養士 船山