腎性貧血とその治療薬である注射製剤ネスプについて勉強会がありました。
腎臓は、そらまめのような形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器で、腰のあたりに左右対称に2個あります。
腎臓は次のような重要な働きをしています。
①血液を濾過して老廃物や塩分を尿として体の外へ排出します。腎臓の働きが低下すると老廃物が体に蓄積し「尿毒症」
となります。
②塩分と水分の排出量をコントロールすることによって血圧を調整しています。腎臓と血圧は密接に関係し、腎臓の働きの低下によって高血圧になることがあります(腎性高血圧)。高血圧症は腎臓に負担をかけ、さらに腎臓の働きを悪化させることにつながります。
③血液(赤血球)は骨髄の中にある細胞が、腎臓から出るホルモン(エリスロポエチン)の刺激を受けて作りだします。腎臓の働きが悪くなると、このエリスロポエチンが出にくくなってしまうため、赤血球がが十分につくられなくなります。この状態を「腎性貧血」といいます。
④体内の体液量やイオンバランスを調節したり、体に必要なミネラルを体内に取り込む役割も担っています。腎臓が悪くなると体液量の調節がうまくいかないため、体のむくみにつながります。 また、イオンバランスがくずれると、疲れやめまいなど、体にさまざまな不調が現れることがあります。
⑤骨の発育に関わっていて、カルシウムを体内に吸収させるのに必要な活性型ビタミンDをつくっています。
この③番目の腎臓の機能が低下し、エリスロポエチンが不足し起こる貧血を腎性貧血と言います。貧血の症状は疲れやすい、動悸・息切れ、めまいなどです。また貧血状態では全身の酸素不足が起こり、心臓には常に負担がかかり、心不全をおこすこともあります。
腎臓の機能は、だれでも加齢とともに少しづつ低下していきます、またもとに戻ることはありません。高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症では腎臓の機能低下が速くなります。そのため特にそうした疾患では、腎臓の働きが低下してないかの早期発見が大切になります。
トマト内科では定期的に血液検査と尿検査を行っています。血液検査では推算糸球体濾過量(eGFR)が腎臓の働きの指標となり、貧血の度合いはへモグロビン11%未満の方は治療の対象となります。また、問診では家庭血圧の確認と血圧測定をして降圧薬の調整の参考としています。
腎性貧血の治療には、エリスロポエチンの分泌不足を補うために赤血球造血刺激因子製剤による薬物治療が行われます。赤血球造血刺激因子製剤ネスプ30㎍を2週に1回静脈注射で開始してヘモグロビンの数値を確認しながら定期的に治療していきます。疲れやすさなどの日常生活を妨げていた症状の改善が期待されます。
腎性貧血による疲れやすさや動悸・息切れ、めまいなどの症状は徐々に進行するので、体がその症状に慣れてしまい気付きにくいといわれます。気になる症状がある方はご相談ください。
看護師 日村